不動産用語集
あ行
一般媒介契約
一般媒介契約とは、依頼者(売主)が複数の宅地建物取引業者と契約することができる媒介契約のことを言います。また、宅地建物取引業者と契約関係が発生している状態でも、依頼者自身が直接買い手を見つけることも可能です。依頼者が直接買い手を見つけた場合、一般媒介契約が契約期間中であっても、宅地建物取引業者は依頼者へ営業経費を請求することはできません。媒介契約の中では、最も依頼者に対する制限が少ない契約です。
一般媒介契約には2種類の契約があります。一般的に「明示型」と呼ばれるものは、依頼者が既に宅地建物取引業者と契約している場合において、他の宅地建物取引業者と新たに契約する際に、他の宅地建物取引業者の名称や所在地を既に依頼している宅地建物取引業者に公開することが義務となります。
「明示型」の一方で、「非明示型」と呼ばれるものがあります。一般媒介契約の非明示型の場合、既に宅地建物取引業者と契約関係にあるが、他の宅地建物取引業者と新たに契約する際に、契約が発生することを既に依頼している宅地建物取引業者に公開しなくてよいという契約になります。
一般媒介契約の場合、契約関係にある宅地建物取引業者は、依頼者へ販売状況を報告する義務は発生しません。そのため、販売状況の確認は、依頼者が自発的に宅地建物取引業者へ確認することになります。
一般媒介契約に関しては法令での契約期間を定めてありません。行政の指導では3ヶ月となっていますが、必ずしも3ヶ月でなければいけないというわけではありません。なお一般媒介契約を更新する際は、依頼者から宅地建物取引業者へ申し出る必要があります。依頼者は自動更新のように認識している場合もあるので注意が必要です。
一般媒介契約を契約期間中にいつでも解約することが出来ます。解約の申し出は依頼者が宅地建物取引業者へ書面もしくは電話でも申し出ることが出来ます。また、解約した場合、契約期間中に宅地建物取引業者が費やした営業経費について請求を受けることはありません。
一般媒介契約は、明示型、非明示型ともに指定流通機構(レインズ)への登録の義務は発生しません。ただし、宅地建物取引業者の任意により登録することは可能です。
違約金
違約金とは、契約に違反した者が契約の相手方に対して支払う金銭のことで一種の制裁金です。一般に、債務不履行があった場合、債権者は債務者に損害賠償を請求することができます。損害賠償を起こす場合、債権者は損害の規模や額を証明することが必要です。不動産における損害の証明には、時間がかかることも多く、契約の際に金額を予め記載しておくと請求がしやすいということで、違約金が決められることが一般的になっています。
違約金の金額については手付金額よりも高く設定する場合が多く、契約書で定めた違約金額と実際に生じた損害額に差が生じても、変更や増減できないこと、また、契約締結時から時間がたち、損害額が増えることと、履行利益に関わる期待値が大きくなることがその要因となっています。
違約金は民法の「損害賠償の予定」とみなされていますので、違反者が支払うのは、実際の損害とは関係なく、契約書にて記載された違約金のみとなります。違約金の金額に関しては上限があり、売主が宅地建物取引業者で買主が個人は、違約金は契約総額の20%を超えることができないように定められています。不動産の売買契約での多い事例として、買主が売買契約書に定められた金額の全額を支払わない、売主が引渡の期日に応じないなど当事者の一方が債務の履行をしない場合があります。
不動産売買契約の際、違約金に関しては、重要事項説明で売主・買主に説明されます。重要事項説明とは、不動産の特性や取引の形態に起因して取引当事者に不利益が発生することを防ぐための仕組みとされています。買主の債務不履行により売買契約が解除された場合には、すでに支払済みの手付金を違約金の一部に充当することができます(※手付による契約解除権が消滅した後に契約を解除する場合には、違約金を支払わなければならないので注意しなければいけません)。
さらに、売主または買主は解除にともない違約金を超える損害が発生したとき際は、違約金を超える金額については請求することがでませんし、損害が違約金より少ない金額の場合も違約金の減額を求めることができません。重要事項説明には、違約金の予定金額を記載せず、請求できる旨と、具体的な金額などは売買契約書に記載されている旨だけが書かれている場合もあるので細かく確認する必要があります。
具体的な金額が記載されていない場合は、仲介業者などの協力も得て実際に生じた損害金額を掲示する必要があります。
印紙税
契約書、受取書、証書、通帳などを作成する際に課税される税金。国税である。
印紙税は、印紙税法に定められている20種類の文書(課税文書)に対して課税される。例えば、不動産売買契約書、建築工事請負契約書、土地賃貸借契約書、代金領収書などは課税文書であるが、建物賃貸借契約書や不動産媒介契約書は課税文書ではない。
納付方法は、課税対象となる文書に収入印紙を貼り、その収入印紙に消印を押すことによって納税が完了する。この場合に、契約等において両当事者が文書を2通作成するときにはその2通についてそれぞれ印紙税を納付しなければならない。
印紙税を納めなかった場合には、印紙そのものを貼付しないときは納付すべき金額の3倍(自ら申告したときは1.1倍)、消印をしないときは消印をしない印紙と同額の「過怠税」が課税される。
印紙税額は、文書の種類および文書に記載された契約金額等に応じて定められている。
なお、不動産の譲渡に関する契約書および建設工事の請負に関する契約書については、税率の引き下げが措置されている。ただし、この特例の適用については期限が定められているので、具体的な期限について確認が必要である。また、電子契約の場合には原則印紙税が不要となる。
売渡承諾書
売渡承諾書とは、不動産売買において売主が、購入の意思を示した買主または媒介業者に売却の意思があることを明示する書面です。売買契約を進める流れの中では、買主から買付証明書の提出があってからの交付となります。売渡承諾書を発行することにより、媒介業者が交渉をより円滑に行えるようになります。書面を発行し、売主と買主間で書面を取り交わすと法的効力が生まれると思われがちですが、売渡承諾書を発行しても売買契約が成立したわけではありません。当然、契約が締結していないので撤回することも可能です。また、買付証明書のみの取り交わしで、売渡承諾書の取り交わしがない場合でも売買契約の交渉を進めることは可能です。売る意思があることを示すことが主目的の書面となります。
売渡承諾書に記載すべき事項としては下記になります。
・売主の氏名、住所
・買主の氏名、住所
・承諾の発効日、有効期間
・買主に売り渡すという意思がある旨
・土地の情報(所在地、地目、地積)
・建物の情報(所在地、家屋番号、床面積、構造)
・売り渡し条件(販売予定の金額、引き渡す時期)
・双方の捺印
売渡承諾書はその性質上、売主と優先的に交渉しているということを、買主が第三者に対して証明する目的で用いられることもあります。
なお、法的効力がないからと安心してはいけません。それは、売主から見ると損害賠償を求められる、買主から見ると損害賠償を求めることができる書類だからです。売主は買付証明書と売渡承諾書を取り交わし交渉を進めていく中で、信義則上の義務を負います。信義則の義務には、配慮義務・説明義務・誠実交渉義務などがあります。配慮義務とは、交渉中に相手の人格や財産に損害を与えないようにすること。説明義務とは、売買契約の交渉において売主が不利となるような物件の情報についても買主や媒介業者に積極的に知らせる義務。誠実交渉義務とは、売買契約に前向きに検討し契約の成立に努めることを言います。この義務に違反した場合は、損害賠償の請求が可能となります。買付証明を提出し、売渡承諾も取り交わし、購入に向け金融ローンの申請をかけ、スケジュールを決めて契約締結に向けて活動している買主に、急遽、売主が拒否の姿勢を示すと買主にとっては大きな損失となります。その損失に対しては、損害賠償の請求ができることになります。
か行
買付証明書
不動産の購入希望者が、当該不動産を購入する意思がある旨示す書面。売主または取引仲介者に対して交付する。
不動産買付証明書は意思を一方的に表明するものであって、いつでも撤回できる。また、不動産買付証明書の交付を受けて売主が買主に「売渡承諾書」を交付した場合であっても、それは売買交渉を円滑にするためのプロセスであって、一般に、直ちに契約が成立したとは認め難いと考えられている。
瑕疵担保責任
不動産の瑕疵担保責任とは、不動産の瑕疵に関する売主の責任のことです。不動産の売買契約が成立した際には、買主が契約時に知りえなかった瑕疵が存在した場合、買主は売主へ損害の賠償を求めることができます。不動産の瑕疵については、雨漏りや害虫被害など実際に買主が住んでみないと判明しないことが多いです。(これを隠れた瑕疵と呼びます。)不動産の瑕疵担保責任は、売買契約において売主が宅地建物取引業者でなければ瑕疵担保責任を負わない特約を設けることができます。
(不動産の瑕疵担保責任に関する注意点)
前述のように、特約として瑕疵担保責任を負わないと明確に表記する場合もありますが、原則、売主には瑕疵担保責任が発生致します。新築物件の場合、売主は、住宅の主要構造部分(基礎、屋根、柱、外壁など)について、10年間の瑕疵担保責任の義務を追います。中古物件で、かつ宅地建物取引業者が売主の場合、2年以上の瑕疵担保責任を負うことが義務づけられています。宅地建物取引業者が売主でない場合は、2~3ヶ月程度の瑕疵担保責任を設定するのが一般的です。さらに、宅地建物取引業者が倒産することもあるので、瑕疵担保責任の補償保険の有無も注意して確認が必要です。
平成26年の民法改正により、瑕疵や隠れた瑕疵の概念がなくなり、契約不適合責任が設けられています。民法上では、隠れた瑕疵という文言が削除され、「目的物の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合」の売主の責任について規定されました。目的物の修補請求・追完請求・代金減額請求が新たに加わるなど、売買契約の際の取決めが従来よりも重要視されるようになりました。これまで、引き渡しから1年以内と取り決められていた損害賠償請求や、契約の解除についての取決めについては、買主が「瑕疵を知った時から1年以内」に変更されました。上記を考慮して、宅地建物取引業法(宅建業法)の規定では、宅建業者が買主に対して前述の民法の規定以上に不利となる特約をすることができないようになっています。また、民法では、買主が随分あと(例えば、民法だと購入から8年後)に瑕疵の存在を知った場合にも瑕疵担保責任が発生することになりますが、宅地建物取引業法では「物件引渡しの時より2年以上」の期間において責任が義務付けられています。
協会の明示
境界の明示とは、隣接する土地との境をはっきりさせることをいいます。売主は売買契約の際に、買主へ境界を明示することが義務となります。境界の明示を行わなければ、不動産売買の際に買主がトラブルに巻き込まれることがあります。土地の所有者が変わった瞬間に、これまでは問題になっていなかった境界に関しても、トラブルになることがありますので、買主は、購入の際にしっかりと契約内容を確認しておくことが大切です。売主は売買後に買主と隣地の所有者間に問題が発生しないよう、境界を明示して契約を締結することが義務となります。隣地の所有者と境界を確認することの他にも、そもそも表記されている土地面積が正確かという点も確認をする必要があります。特に公募取引の場合、測量図が古く、契約後に実測してみると販売時の表記よりも狭かったということもありますので、事前に実測値を把握することで、売主と買主間でのトラブルを防ぐことができます。
(境界の明示義務に違反すると)
民法415条により、境界の明示を行わず土地を売却すると、債務不履行となり損害賠償責任が売主に発生する場合があります。
境界がはっきりわかるようなブロックや塀がない場合でも、境界の明示のために境界杭やポイントを修復する必要はありません。境界杭やポイントがある場合でも、トラブルになることは想定されます。境界を確定させるには、土地家屋調査士などの有資格者により土地の所有者と隣屑者立会いのもと測量して確定します。その際、口頭だけではなく、筆界確認書を作成する必要があります。筆界確認書は、土地家屋調査士が作成し実印を押して、印鑑証明書も同時に発行し互いに1部ずつ保管します。印鑑証明書がない場合、実印の確認が取れないため認印という判断がとられることもあり、契約を強固なものとするために忘れずに発行しなければなりません。売主との媒介契約によって、土地を販売する媒介業者は買主から境界の明示を求められない場合でも、境界の明示を必ず行う必要があります。境界杭や明確な境界が分からない場合、買主の損害が発生しないよう売主から土地の境界の説明を受け確認します。境界が明確にわからない場合は、土地家屋調査士に依頼し、売主と隣地の所有者立会いのもとあらかじめ調査を行い、買主に境界を明示できるような状態にしておくことが好ましいです
建築基準法
建築基準法とは、国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めた全7章106条からなる法律です。1950年に制定後頻繁に改正されてきました。
建築技術や建築資材の進歩が進むにつれて、その中身も時代に合わせたものになっています。2003年の改正の際には、大きな社会問題となっていたシックハウス症候群への対策が義務付けられました。
また、2005年には耐震偽装などが社会問題となったあとの建築確認・検査の厳格化、指定確認検査機関の業務の適正化、建築士等の業務の適正化及び罰則の強化、建築士・建築士事務所及び指定確認検査機関の情報開示、住宅の売り主等の瑕疵担保責任の履行に関する情報開示など大きく改正されました。
耐震や耐火に関しては、日本が地震や火山が多いことなどからメディアに建築基準法の観点から取り上げられることも多いです。
建築基準法は、大きく実態的規定と統括的規定に分けられます。実態規定とは、建築物の使用用途や規模などに応じて求められる構造を定めた規定です。さらに、単体規定と集団規定があります。
単体規定とは、建築物個々の必要最低限度の構造が規定されており、土地などの外的要因に依存することなく単体での安全性や快適性などが規定されています。
例えば、地震が起きた時に人命を守れる構造耐久になっているか、人が避難経路を確保できる構造なのかということが規定されています。また、集団規定に関しては、都市計画法と密接した規定となっています。
建物敷地の条件(接道義務など)、用途地域規制(都市計画法で定められた用途に対応して建築できる建築物の種類の規定)、容積率、建ぺい率、形態規制(高さや日陰の制限)など、建築物が集まって形成される都市の環境などを規定したものが集団規定です。
都市計画法の中では、各地域内の用途地域について細かくあるべき姿が示されておりその用途まで規定されています。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日の時点で所有している固定資産に課される地方税です。固定資産税は固定資産税評価額に税率をかけて求められます。
固定資産税評価額は3年に1回評価しなおされ、対象となるのは主に土地と家屋と償却資産です。
土地は住宅だけでなく田畑、池沼、山林など全ての所有する土地を指します。家屋は店舗や倉庫などの所有する全ての建物です。
償却資産というのは、会社や個人事業主が所有する業務のための構造物、機械、備品などのことです。営業権や無形減価償却資産は含まれません。また、自動車税および軽自動車税の対象である車やバイクなども除かれます。ただし、自家用クルーザーなどの船舶は購入後5年以内なら固定資産税の対象となります。
そもそも、固定資産税評価額は売買価格がそのまま評価額になっているわけではありません。固定資産評価額は国が定めた固定資産評価基準に基づいており、市町村長がその価格を決定して、その額をもとに課税標準額を算定します。ただし、課税標準の特例措置や調整措置が適用される場合は通常の課税標準額より低く算定されます。
また、国が定める標準税率は1.4%となっています。しかし、市町村の各自治体が独自に税率を定めることができるので、住んでいる場所によっては税率が違う可能性があります。もっとも、1.7%を超える税率にする場合は、自治体の議会によって納税者からの意見聴取が必要となります。
ところで、税負担を軽減するために住宅用地については特例措置が設けられています。住宅用地なら一律というわけではなく、住宅一戸あたり200平メートル以下までは課税標準は6分の1 、200平メートルを超えた分については課税標準は3分の1となります。アパートの場合、部屋数は戸数として数えるので、面積によっては用地すべてが6分の1で計算されます。なお課税標準額が、所有する土地が30万円未満(家屋なら20万円未満)なら、それぞれ課税されません。
固定資産評価額は土地も家屋も、国の定める固定資産評価基準によって算出されます。中には、この評価額に納得できないという方もいらっしゃるかもしれません。果たして評価額が適正であるかどうか、他の物件と比較しながら閲覧することが出来ます。それは、「縦覧」といわれる制度で、自治体によって閲覧期間が違いますが、大抵は4月1日から6月30日までとなっています。その上で評価額に不服があれば、納税通知書の交付後60日以内に審査の申出ができます。固定資産税は賦課課税制度といって、自治体が自動的に税額を計算する徴収方法となっています。職員がひとつひとつチェックしているわけではないので、税額がおかしいと感じたら縦覧をご自身でチェックして、異議を申し出るべきでしょう。
さ行
財産評価基準(路線価)
財産評価基準とは、相続税や贈与税、固定資産税などを算出する際の算出基準となるものです。評価基準は、国税庁が財産評価基準書として公示します。評価をまとめ可視化したものとしては、路線価図と評価倍率表が用いられます。財産評価基準書としては一般的に、路線価図にまとめられていますが、評価倍率表は路線価を定めることが出来ない土地を評価する際に使用されます。
一つの土地には、基本的に、3つの価格がついています。実勢価格、公示価格、路線価です。
路線価とは、市街地を形成する土地の道路に接する宅地の評価です。
算出方法としては、路線価図にある1平方メートル単価に敷地面積をかけて土地を評価していきます。その評価を国税庁が路線価図にまとめるのですが、路線価図に記されている路線価は毎年変わります。
なお、路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があり、一般的に「路線価図」と言うと相続路線価図の方を指しますが、価格を確認する際には注意することが必要です。
「相続税路線価」は、1月1日を評価地点、全国約40万拠点を基準値として算出し、国土交通省土地鑑定委員会が7月に公示する公示地価を指標に、約8割の価格で設定されます。一方で、「固定資産税路線価は」上記の公示価格の約7割の価格を指標とし市町村長によって定められています。
相続税価格路線は、1年に1回の更新、固定資産路線価は3年に1回更新されます。固定資産税路線図の価格が8割より下になっているのは、3年に1回の更新のため多少の精度のズレを加味しての比率となっています。
価格の制定は、道路の幅や、最寄り駅からの距離など交通の便、下水道やガスなどのインフラの整備状況、自治体による都市計画などによって評価されています。さらに、固定資産税は毎年徴収されますが、相続税に関しては、相続のタイミングの1回なので、精度が高くある必要もあります。
重要事項説明書
重要事項説明書とは、契約に関しての重要事項を契約予定者に説明するための書類です。
宅地建物の取引や保険の販売、マンションの委託契約、建築設計契約などさまざまなものがあり、
契約内容に応じてそれぞれ用意されています。
宅地建物の取引に関しては、宅地建物取引業者が、売主と買主(もしくは貸主と借主)に対して、契約上重要な事項を説明するために用います。確かに説明を受けたことを証明するために当事者に署名や押印をしてもらいます。
重要事項の説明が必要とするのは、業者自身が売主として取引する場合や不動産取引を代理・媒介する場合であり、その説明は売買契約や賃貸借契約が成立するよりも前に行なわなければなりません。
また、宅建業者による重要事項説明書の説明は、宅地建物取引士の資格を所持する者が内容を記載した書面に記名押印し、書面を交付した上、口頭で説明を行わなければなりません。
説明を行う際には、相手から請求がなくても、必ず宅地建物取引士証を提示しなければなりません。
また、これらの手続きは契約予定者の同意があったとしても省略してはならず、内容を熟知している宅建業者が契約予定者でも行う必要があります。
説明する内容は、不動産売買か賃貸かによっても異なりますが、大まかに分けて、取引対象不動産の権利関係、取引対象不動産に係る法令上の制限、取引対象不動産の状態やその見込み、契約の条件などが挙げられます。
元々、この説明は不動産の特性や取引内容が原因で当事者に不利益が発生することを防ぐために必要とされていますので、説明内容が厳格に定められております。
重要事項説明書は定型書式になっていますが、地域によって条例があったり、対象物件独自の特徴などによって適宜書き換えられていたりすることがありますので、説明はきちんと聞いておきましょう。質問をすると詳しく教えてもらえますので、特殊な内容や、分かりにくいことがあればその都度、確認をするよう心掛けて下さい。
重要事項説明書は内容が複雑で長文に渡っているため、言われるままに流している人も多いです。
しかし、高額な買物や取引になりますので、説明内容をきちんと理解した上で納得して契約できるように、分からないことは何度でも確認しておいた方がよいでしょう。
譲渡所得
譲渡所得は所得税法で定められている10種類の所得区分の中の一つで、資産の譲渡によって収入があった場合は、この所得に分類した上で計算を行います。譲渡所得の対象となる資産の例としては、土地、建物、自動車、株式、公社債、インゴット、骨董品、美術品などが挙げられます。しかし、全ての資産が譲渡所得の対象となっているというわけではなく、山林の譲渡については山林所得の対象となっていたり、金融債権の譲渡については事業性の有無によって事業所得か雑所得のいずれかの対象になっていたりするなどの例外もあります。
譲渡所得の計算では、譲渡した資産を「保有期間が5年超の譲渡資産」と「保有期間が5年以下の譲渡資産」に分けて、各区分における譲渡所得を計算します。ただし、株式や一部公社債については保有期間に関係なく、一律で計算します。保有期間は、不動産の場合は取得日の翌日から譲渡した年の1月1日までの期間で、不動産以外の資産は取得日の翌日から譲渡日までの期間となっています。
譲渡所得の計算手順は、まず譲渡によって得た収入の金額から、資産の取得費用と資産の譲渡費用を差し引いた後、特別控除の適用を受ける場合はその控除額も差し引いて、課税譲渡所得を算出します。そして、この金額に所定の税率を乗じた金額が、譲渡資産に対してかかる所得税額ということになります。ここで問題となるのは、取得費用や譲渡費用として計上できる費用は何かということですが、これは資産の種類によって異なります。例えば、不動産の場合は、不動産購入時の購入代金と必要経費の合計金額から建物の減価償却費を差し引いた金額が取得費用となり、仲介手数料や登記費用、印紙代などが譲渡費用となります。
譲渡所得は、譲渡した資産の種類によって課税方法が異なっています。2015(平成27)年現在では土地、建物、株式、出資持分については分離課税の対象となっており、給与所得や一時所得、雑所得などといった他の種類の所得とは合算せずに税額を計算し、税率も別途定められています。一方、これ以外の資産の譲渡による所得は総合課税となっており、他の所得と合算した上で、超過累進税率を適用して税額を計算します。また、分離課税の対象となっている資産の譲渡益に対してかかる所得税は、保有期間が長い資産の方が税制上有利になっています。例えば、マイホームとして所有している不動産を売却する時に、保有期間が10年を経過していれば所得税と住民税の税率が軽減される特例や買い替え特例の適用を受けられる可能性があります。
専属専任契約
専属専任媒介契約とは、依頼者が1つの宅地建物取引業者としか契約できず、契約期間中は他の不動産会社とは契約することが出来ない媒介契約です。専属専任媒介契約は、他の媒介契約と違い宅地建物取引業者と契約期間中に依頼主が直接買い手を見つけることは禁止されています。もし、依頼者が直接買い手を見つけて売買契約を締結した場合は、宅地建物取引業者は依頼者に対して約定報酬額を請求することができます。媒介契約の中では、依頼者の制限が一番多く最も拘束力のある契約となります。
専属専任媒介契約の場合、専任媒介契約と同様に契約関係にある宅地建物取引業者は、依頼者へ販売状況を報告する義務があります。専属専任媒介契約における販売状況の報告は、1週間に1度以上というのがルールとされており専任媒介契約よりも報告頻度が多くなっています。報告の手段は、電話や口頭ではなく書面、または電子メールによる報告を行わなければなりません。
専属専任媒介契約は、最も拘束力の強い媒介契約のため、その契約有効期間は3ヶ月以内とされています。さらに注意すべき点は、3ヶ月を超える契約を取り交わしている場合でも法令上の有効期間は3ヶ月となります。専属専任媒介契約の更新は、依頼者の申し出を宅地建物取引業者が受領することによって更新されます。2回目以降の更新の際も契約期間は3ヶ月となっており、契約の更新は、自動更新にすることはできません。契約更新の際には必ず契約書の作成と取り交わしが必要となります。
専属専任媒介契約は3ヶ月の契約期間中に解約することができます。解約の申し出は依頼者が宅地建物取引業者へ書面での通達、もしくは電話で連絡し解約することもできます。解約になった場合、専任媒介契約と同様に契約を締結した日から、解約の合意が取れた日までに宅地建物取引業者が費やした営業経費を支払わなくていけません。
専属専任媒介契約は、指定流通機構(レインズ)への登録が義務化されています。宅地建物取引業者は、契約締結後すぐにレインズへ通知し、5営業日以内にレインズへ登録しなければいけません。レインズに登録したあと、宅地建物取引業者は依頼者にレインズが発行する登録証明書を依頼者に交付することが義務付けられています。
専任媒介契約
専任媒介契約とは、依頼者が1つの宅地建物取引業者としか契約できず、契約期間中は他の不動産会社とは契約することが出来ない媒介契約です。しかし、専任媒介契約は一般媒介契約と同様に、宅地建物取引業者と契約期間中でも依頼主が直接買い手を見つけることは可能です。買い手が見つかり売買契約が締結になった場合、依頼者は契約関係にある宅地建物取引業者に、それまで宅地建物取引業者が費やしてきた営業経費を支払う必要があります。一般媒介契約と違い、宅地建物取引業者が1つということで窓口が一本化されるので依頼者の負担も軽減されますが、その反面、一般媒介契約よりも依頼者にとって拘束力の強い契約となっています。
専任媒介契約の場合、契約関係にある宅地建物取引業者は、依頼者へ販売状況を報告する義務があります。専任媒介契約における販売状況の報告は、2週間に1度以上というのがルールとされています。報告の手段は、電話や口頭ではなく書面、または電子メールによる報告を行わなければなりません。
専任媒介契約は、依頼者にとって拘束力が強いこともあり、その契約有効期間は3ヶ月以内とされています。さらに注意しなければいけない点は、仮に3ヶ月を超える契約を取り交わしている場合でも法令上の有効期間は3ヶ月です。専任媒介契約の更新は、依頼者の申し出を宅地建物取引業者が受領することによって更新されます。2回目以降の更新の際も契約期間は3ヶ月となっており、契約の更新は、自動更新にすることはできません。契約更新の際には必ず契約書の作成と取り交わしが必要となります。
専任媒介契約は3ヶ月の契約期間中に解約することができます。解約の申し出は依頼者が宅地建物取引業者へ書面での通達、もしくは電話で連絡し解約することもできます。ただし、一般媒介契約と違い、専任媒介契約は契約を締結した日から、解約の合意が取れた日までに宅地建物取引会社が費やした営業経費を支払わなくていけません。
専任媒介契約は、指定流通機構(レインズ)への登録が義務化されています。宅地建物取引業者は、契約締結後すぐにレインズへ通知し、7営業日以内にレインズへ登録しなければいけません。レインズに登録したあと、宅地建物取引業者は依頼者にレインズが発行する登録証明書を依頼主に交付することが義務付けられています。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子または孫に対
して生前に財産を贈与した場合に選択できる税制です。
この場合、20歳以上の子または孫は推定相続人である必要があります。推定相続人とは、現状のままで相続が開始した場合に、相続権のあるであろうという人を指します。
この制度を取ると、2,500万円までの特別控除があり、2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。
また、2,500万円を超えた場合については、超えた額に一律20パーセントの贈与税が課税されます。相続時精算課税を選択した場合の相続税は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった際に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の金額と相続や遺贈などにより得た財産の金額とを合計した金額を相続税額から、それまでに納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
この場合、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
さらにその際に、相続財産と合算する贈与財産の金額は、贈与時の金額とされています。贈与の金額や回数には制限はありません。相続時精算課税制度を選択すると、この制度で受けた財産に関しては、その年分以降すべてこの制度が適用されます。
た行
宅地建物取引業
宅地建物取引業は、言葉としてよく不動産業と混同されますが、不動産業は宅地建物取引業よりも広義の意味で、売買や賃貸の仲介だけでなく、マンションの管理など不動産にかかわる多様な業務が含まれるので注意する必要があります。
宅地建物取引業で取り扱う宅地とは、今建物が建っている土地、今後建物が建つ土地、都市計画法で定められた用途地域内の土地です。併せて、宅地建物取引業で取り扱う建物とはすべての建物をいい、商業ビルやオフィスビル、また、マンションの一部屋など一部を指すこともあります。これらを前提に宅地建物取引業とは、宅地建物取引業法で
・宅地または建物の売買交換
・宅地または建物の交換
・宅地または建物の売買、交換または賃借の代理
・宅地または建物の売買、交換または賃借の媒介
以上の行為を業として行うものと規定されています。その宅地建物取引業の免許は、国土交通大臣(2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合)または都道府県知事(1の都道府県に事務所を設置する場合)の免許を受けることが必要となります。免許を公布してもらう権限を有するものとしては、個人、法人ともに可能です。
免許の有効期間としては5年間です。満了に際して延長の申請に関しては、満了の期日の90日前から30日前に免許の更新を行わなければなりません。
元々の起こりとしては、戦後当時に不動産取引を規制するものが何も無く、取引の仲介によって無資本でも報酬を得られることから、専門的な知識や経験のほとんど無い者が取引に従事し、手付金詐欺・二重売買などを行う悪質行為が横行するようになった。これらを規制し不動産業が健全な発展を図れるようしたのが始まりである。そのため、宅地建物取引業法1条では、「宅地建物取引業者の免許制度などの規制による、業務の適正な運営と宅地や建物の取引の公正の確保、宅地建物取引業の健全な発達の促進、購入者等の利益の保護と宅地や建物の流通の円滑化を目的としている」とされている。
手付金
不動産売買において、手付金という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
不動産の取引は高額な契約になりますので、通常は手付金や中間金、残代金という形で分割にて支払いをしています。
手付金は売買契約を締結した時に支払われる金銭のことで、最終的に代金全額を支払うまえに売買代金の一部として収めるものです。
手付金の性質には大きく分けると三つあり、契約の成立を証するための証約手付、契約の相手方が契約の履行に着手するまでの間、解除権を留保して、手付放棄や手付倍返しで解除することができるという意味合いで支払う解約手付、売主、又は買主に債務不履行があったとき、損害賠償とは別に没収できる違約手付があります。
違約手付は個別の不動産売買契約によって異なった意味合いで取り扱われますが、一般的には売買契約書を作成して契約を行うため、解約手付けとして扱われることが多いようです。
なお、違約金や損害賠償の予定額は別途条項で定められていることがほとんどです。
当事者間で手付金の性格を決めない場合には、民法の規定により、解約手付とされます。
解約手付の場合、一般的には売買代金の10%程度(20%が上限)といわれていますが、双方が納得すればそれ以下でも問題はありません。
未完成物件の売買取引の場合には、5%とすることもあるようですが、その場合には残代金を支払う前に中間金を支払うこともあります。
しかし、買主が急な転勤などで購入を断念する、もしくは売主が倒産するなどの事情でどちらかが解約する場合には、手付金の金額に合わせて、相手方に支払をする必要がありますので、しっかり確認をするようにしましょう。
この支払は原則、契約日当日となっていますので、金額や支払予定日を確認して、きちんとそれまでに現金が工面できるかどうかを調べておかなければなりません。
支払い方法は現金手渡しの場合も振り込みもありますが、振り込む場合には当日に着金ができるように、当日の早い時間帯か前日中に日付指定で振り込むようにしておいたほうがよいでしょう。
また、振込みをした用紙も持参しておくと、入金がスムーズに確認できますので安心です。
現金手渡しの場合には、きちんと額面がそろっているか予め確認しておくように致しましょう。
手付金等の保全措置
保全処置とは、安全な状態を保持するために行われる処置のことです。不動産売買における、保全処置は不測の事態に当事者が不利益を講じないための対策です。買主が宅地建物取引業者から宅地・建物などを購入する場合、物件の引渡しを受ける前に、手付金(契約締結時に交付)・中間金・内金(物件引渡し前に交付される)などの名目で代金の一部を払います。これを手付金等といいます。不動産売買契約後に、売主である宅地建物取引業者が倒産し、連絡が取れない状況になるなど、不測の理由で物件の引渡しができなくなった場合、既に支払っている手付金等が返還されずに、大きな損害をうける可能性があります。そのため宅建業法では手付金等の返還が保証されています。
具体的に保全対策を講じる必要があるケースは、
1、物件が完成前の売買にあたっては、売買代金の5%または1,000万円を超えるとき、
2、物価が完成後の売買にあたっては、売買代金の10%または1,000万円を超えるときは、手付金等の保全措置を講じなければならないとしています(宅建業法第41条、第41条の2)。しかし、手付金等の金額が前記の一定金額以下の場合や買主への所有移転登記等がされた場合は、保全措置を講ずる必要はないとされています。宅地建物取引業者が売主で、物件を購入するとき、一定額を超える手付金等を支払う場合、宅地建物取引業者はその保全措置を説明し、その保全の内容を書面化した「保証書」を買主に渡さなければなりません。保証の対象となるのは、売主が契約締結から不動産を引き渡すまでの間に受け取った金額の全額となります。そのため、登記が済むまでは、保証内容を確認し、保証書を大切に保管しておかなければなりません。
保証による手付金の保全措置の方法としては以下の3つの処置があります。
保証処置:銀行などと保証委託契約を結ぶ方法
保険処置:保険事業者と保証保険契約を結ぶ方法
保管処置:宅地建物取引業者と全国宅地建物取引業保証協会や不動産保証協会などの指定保管機関が手付金等寄託契約を結ぶ方法
謄本
謄本とは書面化された原本の内容をすべて書き写したもので、戸籍謄本、登記簿謄本、手形謄本などいくつかの種類があります。
その中で不動産に関わるものは、登記簿謄本です。土地や住宅を取得した際は、取得した権利に準じて登記をすることが必要となります。
登記をしていなければ、法的に所有件を主張することはできません。
購入した場合だけでなく、相続や贈与した場合も必要ですし、住宅ローンなどを借りた場合には、抵当権の設定登記もしなくてはなりません。
その登記情報をまとめたものが、登記簿です。登記簿には、土地登記簿、建物登記簿、株式会社登記簿など登記の種類に関してそれぞれ登記簿があります。
登記簿謄本は、登記事項証明書と呼ばれることもあり、だれでも取得することが可能です。
戸籍謄本などは、個人情報が掲載されているので閲覧することが制限されていますが、登記簿謄本は不動産の権利を保持していることを証明するため、または誰の所有なのかを確認するためのものなので取得可能とされています。
取得は、以前はその不動産を管轄する法務局で紙を確認していましたが、最近では最寄りの法務局にて不動産登記情報交換サービスによってコンピュータで確認することが出来ます。
対象の不動産を調べる際は、土地の地番や建物の家屋番号が必要となりますので予め確認しておく必要があります。
登記簿謄本には、表題部、権利部甲区、権利部乙区の3つに関してそれぞれ分かれています。
表題部には、不動産が土地の場合は、不動産番号、所在、地番、地目、土地の面積が記載してあります。建物の場合には、家屋番号、住居・工場などの種類、鉄筋・木造などの構造、床面積が表示されます。
権利部甲区には、不動産の所有権に関わることが記載されており、順位番号、登記の目的、受付年月日、受付番号、売買・相続などの所有に関する原因、所有者が明記されます。
権利部乙区には、所有権以外の情報が記載されます。順位番号、抵当などの登記の目的、受付年月日・受付番号、原因、権利者その他の事項として抵当権の場合は、債権額や利息について明記されます。不動産の登記簿謄本には、現在事項証明書と全部事項証明書、閉鎖事項証明書の3種類があります。
現在事項証明書には、対象不動産の現在の状況のみが記載されています。過去の所有者の履歴までの記載が必要であれば全部事項証明書、さらに古い情報まで必要な場合は閉鎖事項証明書が必要となります。
な行
任意売却
任意売却とは、債務超過状態の不動産を売却することです。一般的には、債務者と債権者の間に仲介の不動産会社が入り、双方の合意をとり売却にいたることが多いです。債権者と債務者の双方にとって利点が多いのが任意売却の特徴です。
何らかの事情で、住宅ローンの返済ができなくなると債権者である金融機関は、抵当権によって該当不動産を差押えすることができます。また、住宅ローンの返済だけでなく、固定資産税や住民税など税金の滞納が続いた場合も不動産が差押えになる場合もあります。差押えられた後は、競売にかけられることが多いです。競売にかけられると、競売開札日まで不動産の落札金額が判明しません。そのため、競売によって換価された場合、債務額よりも少額になることが多いケースがあるので、債権者としても回収漏れのリスクを伴います。さらに、落札者との交渉もほとんどできないため、立ち退きの期日などに関しても落札者の都合によって左右されてしまいます。差押さえを解除するには残債を一括で返済することが必要になりますが、それができない際に、取られる手段が任意売却になります。
任意売却を行う際は、不動産会社が仲介に入り、一般の不動産と同じように売却をします。裁判所によって不動産を競売にかけられるまでに行うことを考えるとかなりタイトなスケジュールになります。さらに債権者が1社だけでない場合は、すべての債権者の合意を取り付けることが必要となります。よって、任意売却は時間との戦いになることが多いです。
任意売却物件を購入する場合の利点としては、一般の不動産物件を探すよりも安価で見つけられることです。安価な物件を探す場合は、任意売却物件の他に競売物件を探すという手段もあるのですが、競売物件では現金で一括支払いすることが求められます。さらに、不動産の内見もできないため判断材料が限られた中で検討することになります。一方で、任意売却物件の場合は住宅ローンを組むこともでき、内見も可能です(売主の同意は必要)。任意売却された物件を購入する際にも注意点としては、一般の不動産取引と違い、物件の契約に関しては、債権者との交渉も入るため通常よりも多く時間がかかります。瑕疵担保責任もないため、購入後に瑕疵があった場合も買主の負担が大きくなります。
は行
売買契約書
不動産の売買は、人生においても一、二を争うほどの高額な買物になります。そのため、単に現金と現物を交換するのではなく、一般的には売買契約書を取り交わして契約をする形をとっています。仲介をしている不動産会社も、契約が成立したら遅滞なく契約内容を記載した書面に宅地建物取引士が記名押印の上、交付するよう義務付けられています。
売買契約書に記載されている内容で特に注意すべきものとしては、売買物件の表示があります。これは売買される土地や建物の所在や家屋番号などを記載したもので、登記簿と同じ表記になっています。まず始めに、取引対象の物件に間違いないかどうかを確認しておきましょう。
次に、売買代金や手付金等の額、支払日などが記載されます。
ほとんどの場合、銀行などから資金を借り入れてこれらの代金を支払っていますが、この場合、日付だけでなく手付金の種類や取り扱い、売買代金との割合、解除などについて確認するようにして下さい。
所有権の移転と引渡しの時期ですが、一般的にはこれらは代金の支払と同日に行われますのでご確認下さい。
司法書士に登記を依頼する場合には、代金の受け取りを確認した時点で、売主が所有権移転登記に必要な権利証や委任状を渡し、建物があるときには買主や仲介業者に鍵を渡します。引越しなども踏まえて日程に問題ないか確認しましょう。
中古物件の場合、エアコンや庭木など、更地ではなく付帯設備がある場合には、その内容についても処分方法を検討して契約します。予め受けとる物と処分する物のリストがあるとスムーズに確認が出来て良いと思います。
手付解除は契約を途中で解除できるかどうか、その場合の負担をどうするかなどの取決めです。
後々問題とならないよう、双方の認識に違いがないことを確認をしておきましょう。
引き渡し前の物件の滅失・毀損は、引渡し前に天災などの予測し得ない事情によって物件が毀損した場合の取決めです。一般的には売主が費用負担して修復することになりますが、買主が契約の目的を達せられない時は契約解除という可能性もあります。万が一のことも想定して、事前によく目を通しておきましょう。
契約違反による解除は一方が債務不履行を行った場合の解除で、この場合には債務不履行を行った側が違約金等を支払います。ローン特約はローンが通らなかった場合の措置で、解除の時の買主の負担を免除します。瑕疵担保責任は物件に隠れた欠陥などが見つかった場合のことで、契約の解除や売主の負担による損害賠償や修理などが記されています。購入後のトラブルを避けるために重要です。
不動産取得税
不動産取得税は地方税であり、都道府県から課税される税金です。取得した家屋や土地に対して税金を課税する、取得した時1回限りの税金になっています。つまり名義などを動かさなければ、何度も課税されることはありません。
この税金は固定資産税とも密接な関係があり、課税に使用される基本的な数字は、固定資産の評価を基にして計算されます。すなわち、市町村役場が保管する固定資産課税台帳に基づいて、都道府県税事務所が課税していくという流れになっています。ただし、例外として「相続」をした場合は非課税となります。また、社会福祉法人や宗教法人等が一定の用途に使用する場合で、非課税の用途、目的に合致した場合には、申告により非課税となる可能性もありますが、条件が複雑な場合もあることから、あらかじめ課税元となる都道府県税事務所に対して、確認をしておくことが望ましいでしょう。ただし、営利目的で取得した場合(たとえば駐車場で駐車料金を得るような場合など)は、課税対象となる場合もあり得ます。
この不動産取得税では、住宅用土地の上に住宅を建築あるいは中古住宅もセットで購入した場合には、一定の要件を満たせば減額する措置も設けられています。この軽減の目的は、住宅やその関係する土地の取得をしやすくするということが挙げられます。なお、この不動産取得税には、土地の中でも固定資産の評価が低い農地などが該当する場合がありますが、固定資産評価額が低いために、一定額まで達さない評価額の土地の場合には、税金を課税しないことになっています。建物などでも同様に非課税のルールが設けられていますが、持ち分などを分けて取得するようにしていくことで、不動産取得税が非課税となることがございます。
この取得に関しては、一般的に法務局での土地や建物の登記を動かすことにより取得したと見なしていますが、未登記であっても所有者が変わったことは市町村役場に届け出ないといけませんので、そこで移転、つまり誰がどのような家屋や土地を取得したかの事実は分かります。そのため、取得したことを行政が見逃すことはないということです。
また、建物における固定資産評価額は、新築の場合は固定資産評価額が決まっていないため、市町村役場あるいは都道府県職員が現地を確認して図面と現地とを確認し、固定資産評価額を決定して課税するということになっています。
不動産仲介業
不動産仲介業とは、不動産を売るまたは、賃貸として貸す際に、売主・貸主と買主・借主の仲介役として不動産の売買契約や賃貸契約の成立に向けて業務を行うことです。不動産仲介業の収益は、各種契約締結の際に成功報酬として発生する手数料が主なものとなります。不動産仲介業の存在意義は、売主・貸主と買主・貸主間の、取引が円滑に進むようにサポートするところにあります。
不動産の取引の際は、それまであまり経験のなかった人が関わることも多くあります。不動産取引は一般的な商品取引と比べ、価格の設定が困難です。不動産には同じものがないため一律の価格が設定できません。建坪は同じだが、駅からの距離や周辺の道路状況などの環境によって価格が左右されてきます。さらに、一度決めた価格も据え置きにすることはなく、景気の動向や周辺地域の相場感に合わせて変更していく必要もあります。そういった様々な要因により価格が設定されるため、素人では判断が難しく、高い専門性が要求されています。そこで不動産仲介業がサポートをしています。
不動産仲介業では、調査をもとに売主・貸主と相談のうえ、価格を決めると販促活動を行います。住宅のあるエリアの特徴や、物件の特徴を踏まえて、どういった方に住んで頂くのがいいのか判断し、その人たちに的確に案内が出来るようプロジェクトを組んでいきます。引き合わせが上手く成功し、ご契約となった際も、法律に則った手続きが分かりにくいため、手続きをサポートします。契約後にトラブルが発生することがないよう、売主が自分の伝手などで既に買主を決めている場合であっても、契約書を結ぶ際は仲介業者が入ることが一般的です。
不動産仲介業には、事業用不動産に特化したものと、個人居住用不動産に特化したものがあります。事業用不動産とは店舗、事務所ビル、マンションなど収益を得ることを目的に投資を対象に購入した不動産のことで取り引き先としては、信託銀行の不動産部門、金融系の不動産会社、大手不動産会社の法人部門がメインになります。
このように不動産仲介業は、高度な専門性が必要な業種のため、宅地建物取引業者として宅地建物取引業法の適用を受けることが義務付けられております。また、事務所を2つ以上の都道府県の区域内に置く場合は国土交通大臣の、1都道府県の区域内にのみ事務所を置く場合は都道府県知事の免許を受けなければならず、その事務所には、都道府県知事が行う宅地建物取引士資格試験に合格した宅地建物取引士を置かなければなりません。
や行
融資利用特約
融資利用特約は、住宅ローン特約と呼ばれることもあり、住宅ローンの審査が通らなかった際に売買契約を解除することができる特約です。融資利用特約を結んでおくと契約解除に際して、手付金の返却はもちろん、解約金の支払い義務も発生しません。住宅ローンを申し込む際に契約済みの売買契約書を金融機関に提出するので、買主は住宅ローンを組む前に売買契約を締結する必要があります。もしこの特約がなければ、買主は住宅ローンが組めなかった場合でも、売買契約による代金全額の支払いをしなければならないことになります。一方で売主側も、代金を支払ってもらえないリスクを抱えることになります。
融資利用特約では、売買対象物件の引渡し日までの間に相当の期日(いつまでなら解除可能であるかの期限)を定めます。申請の金額などにより期間はそれぞれですが、1ヶ月ほどとるのが一般的です。期日までに金融機関などから承認を得られなければ、手付金を返還してもらい契約が解除となります。融資利用特約では、融資の承認が得られない際にトラブルが発生することがあります。融資利用特約には、契約解除について申し出が必要なものと、融資の承認が得られれば自動で解除となるものがあります。契約の際は、必ず融資利用特約の文言を確認しましょう。
最初に申し込んだ金融機関で融資が得られなかった場合は、他の金融機関に再度申請する、もしくは、融資以外の資金調達をする必要があります。このとき、再審査をしている間に特約期間が経過したり、結局資金調達が出来ないというトラブルが発生する可能性もありますので、慎重に判断して行動しましょう。融資利用特約の内容はしっかり確認して下さい。融資利用特約では、期間についてもトラブルが発生することがありますので、期日の変更が出そうになった場合は、すぐに融資利用特約の期日延長の覚書を交わして、期日を変更する必要があります。
用途地域
用途地域とは、都市計画法で都市の環境や利便性の確保のため、特定のエリアにおいてその用途に制限を行う地域のことです。例えば、工場の隣に、普通の民家が建っていたとしたら、そこに住む家主は、工場がたてる騒音や、大きな車の出入りによる排ガスなどによって快適な環境で生活を送ることができず、双方に諍いが発生するかもしれません。その状況を作り出さないために、用途地域が定められています。
用途地域は、住居系、商業系、工業系の3つの用途に分けることができます。住居系とは、主目的として住居の環境保護のためにつくられる地域です。その中にも、低層住居専用地域、中高層住居専用地域、住居地域に分けることができます。さらに、低層住居専用地域には、第一種、第二種があります。第一種低層住居専用地域は、床面積50㎡以下で、住居を備えた店舗や、小規模な公共施設、小学校、診療所などが入ります。第二種低層住居専用地域は、床面積が150㎡以下と広くなり、コンビニなどを立てることもできます。中高層住居専用地域についても、第一種、第二種があります。第一種中高層住居専用地域は、床面積が500㎡以下の店舗等が建築可能で、中規模な病院、学校などが建築可能で、3階建て以上の集合住宅も住宅地として整備することができるようになります。第二種中高層住居専用地域は、床面積が1,500㎡までの建物で、小型のスーパーや事務所なども建築ができます。そして、住居地域には、第一種、第二種に加え、準住居地域があります。第一種住居地域は、床面積が3,000㎡以下の建築物で、周辺環境への影響が大きくない工場が建築可能になります。第二種住居地域は、床面積が10,000㎡までになり、大きいスーパーなどの商業施設が可能になります。準住居地域とは、道路沿いの環境を考えた地域で、第二種住居地域同様に床面積が10,000㎡までで、車庫や倉庫などが建築可能となります。宅配業者や、倉庫が点在するような地域です。